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越前漆器のメーカー、漆琳堂が産地の課題解決に向き合い、自社内に木地場を新設

木地師として雇用された近澤蒔氏は、重要無形文化財 「木工芸」保持者 川北良造氏を師として経験を積んできた職人

日本有数の漆器の産地、福井県鯖江市河和田地区で越前漆器の製造・販売を行なうメーカー、漆琳堂。1793年創業という長い歴史を持ち、創業230周年にあたる2023年には同じ越前にある大本山永平寺御用達に認定されている。代々受け継がれてきた伝統的な漆器や業務用漆器の製造以外にも、現代の生活に合わせたカラフルな漆の器「aisomo cosomo」や北陸のものづくりの技術を生かしたブランド「RIN&CO.」の展開、食洗機にも対応可能な「越前硬漆」の開発など、自由な発想で新しい技術を取り入れ、漆文化の継承と発展に取り組んでいる。

漆琳堂は2024年7月に木地ろくろを導入し、木地場を社内に新設。木地職人(木地師)1名を雇用したと発表した。今までの漆塗り専業から、木製品の素地製造も自社内で行なえるよう生産体制を整備し、安定した生産ラインの確保を目指していく。
背景には産地の抱える課題がある。越前漆器は地域内で分業制を確立しており、木地製造、下地、塗り、加飾、と各工程それぞれ別の職人が専門の技術で担っている。漆琳堂も塗師屋として代々「塗り」を手がけてきた。地域の多くの人々が産業に携わり、業務用漆器の出荷総額日本一を誇ってきた歴史がある。しかし近年は職人の高齢化、後継者不足の問題が深刻化し、従来の分業体制の維持が困難になってきている。また、分業では生産ロットが一定数必要であったり、柔軟な調整が難しい点も課題だった。飲食店・旅館など従来の顧客への量産製造体制を強化しながら、現在の市場に即した新しいアイデアを実現する方策を考え、今回の社内で製品を一貫生産する体制の整備へとつながった。

新体制の導入によって、木地ろくろで椀型や円柱等の回転体形状を自社で製造できるようになり、既存の椀木地にはないデザインや木地の厚さなどの調整、1個単位のサンプル作成、少ロットでの受注、また製品開発段階での木地師、デザイナーへの相談も可能となった。産地の未来を担う歴史ある企業が踏み出した新たな取り組みにこれからも注目していきたい。

 

◾️関連情報
株式会社漆琳堂
所在地:福井県鯖江市西袋町701
ウェブサイト:https://shitsurindo.com/

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。