インタビュー:陶芸家・加藤亮太郎
VOICE VOL.7
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
本展の共同キュレーターを務める高山健太郎さんによれば、一般的に工芸は技法や素材を基点とし、現代アートはコンセプトを基にするが、近年はコンセプトに重点を置く工芸作家も増えてきており、「工芸」と「アート」の境界は次第に曖昧に、ジャンルレスになってきているという。高山さんの言葉の通り、今展ではコンセプト、つまり作家の表現したい概念やメッセージを基軸に形を作っていくという手法を取る作品は少なくなく、それは極めて現代アート的な思考方法である。
一方で、ガラスや漆といった素材、絵付けや削りといった加飾技法などの工芸の美を形作るものが、作品を構成する要素として紛れもなく重要な位置を占めている――言うなれば、工芸美が現代アート性とシームレスに融合する――そうした作品こそがクオリティの高い作品であり、逆に言えばコンセプトが甘かったり、素材や技法の意味付けに無理が生じたりすると、途端に凡庸になってしまう困難さもあるのだろうと推察された。そういう意味では、本展では今日のアート市場で一定の価値を見出されることが期待されるクオリティの高い作品が多く見受けられたのは間違いない。ここで全てを紹介できず残念だが、展覧会の企図した工芸的美しさは確かに芸術性をもって提示され、その行方にひとつの可能性を示唆してくれたと言えるだろう。
文:堤 杏子
◾️開催概要
日本の美術工芸を世界へ 特別展『工芸的美しさの行方―うつわ・包み・装飾』
公式ウェブサイト:https://artkogei.com/