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『森本仁展』展覧会レポート

個性豊かな作品が並ぶ

岡山県備前の陶芸家、森本仁さんの作品展が東京 碑文谷のギャラリー、宙(そら)にて開催された。森本さんにとって、宙での展覧会は3年ぶり2度目。前回は二人展で、個展としては今回が初だという。食器や酒器、茶器、花器など総勢300点ほどの作品を展覧した。花器には森本さん手ずから生けた美しい花が彩りを添える。

森本さんの生み出す作品は実に多彩だ。薪窯で焼き締めたオーソドックスな備前焼や、備前の土を用いて灯油窯で焼成した、白く滑らかな土肌の作品。自ら「白花(しらはな)」と名付けたこの作品は、備前の土の可能性の広がりを求めて生み出したものだそうだ。どちらも異なる魅力を備えているが、森本さんの手掛けるものはこうした無釉の作品にとどまらない。灰釉、黒釉、黄瀬戸などの釉ものも数多く制作している。

可愛らしい印象の茶器

豊かな造形センスを生かしながらも、用途のために考え抜かれた形。これらの作品を手に取れば、この作家の自由な、既成概念にとらわれない作陶への姿勢をうかがい知ることができるだろう。今回は、白花に灰釉を掛けた作品や、備前に黒釉を掛けた作品も並んでいた。無釉の焼き上がりの段階でいまひとつだったため、釉掛けし再度焼いてみたところ、良いものができたそうだ。「明確な意図を持って作っているわけではなく、こうして自然とバリエーションが増えてきた感じです。展覧会に来てくださる方には『こんなものも作っているんだ!』と、さまざまな発見や気づきがあっていいと思います。だからこれからもいろいろなものにチャレンジしていきたい」と森本さんは笑う。

美濃で豊場惺也氏に師事した経験は、森本さんに大きな影響をもたらした。「豊場先生のところでの生活は、禅修行のようでした。毎日決まった時間に起きて、掃除などの生活のひとつひとつをきちんとする。生活の基本を教わったと思います。どういう生活をしているかが、全てに繋がるんです。やきものを作るのはその中の一部。いい気持ちで仕事をするためにも、ちゃんと生活してリズムを整えるのは大切なことです」と話す。

展覧会では、その会場の空間に合う作品づくりを意識しているそうだ。暗い空間なら溶け込むような、明るい空間なら光に映えるようなもの。森本さんの作品が会場の空間で生き生きとして見えるのは、作家自身の在り方を、作品が正しく伝えているからなのかもしれない。

■ 関連情報

・ギャラリー 宙
https://tosora.jp/
〒152-0003 目黒区碑文谷5-5-6
TEL: 03-3791-4334
営業時間 11:00~17:00
定休日 火・水曜日

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。