インタビュー:陶芸家・加藤亮太郎
VOICE VOL.7
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
古野幸治さんは1943年生まれ。大阪にて長年、陶芸作品を作り続けてきた。大学卒業後に陶芸の道に入り、26歳の時に出品した伝統工芸展での落選をきっかけに、自身のものづくりを見直し、灰釉表現に辿り着く。灰釉については「何でも燃やした」といい、農家であった自身のルーツを生かしながら、あらゆる植物を灰として、固有の釉薬を作り出してきた。その後、現在の炭酸銅を加えた釉薬表現に移行していく。「色は無限」という本人の言葉の通り、青き色は一つ一つに個性があり、いつまでも眺めていたくなる美しさを持つ。日本で生み出した色でありながら、国境を超えた普遍的な美を感じさせる作品は、シンガポールの若い世代にも好評だったという。
藤堂高直さんは1983年生まれ。タイのチュラロンコン大学で建築の客員教授として勤務する傍ら、現地にて楽茶碗を中心とした作陶を行なっている。ルーシー・リーの作品に出会ったことで陶芸に目覚め、タイの茶文化を意識しながら、自身の作品の展示を行なっているそうだ。今回の展示では、黒楽から鮮やかな色の作品まで、幅広い釉薬表現の作品が展示されており、日本の伝統的な工芸品にはない色合いの作品も見られ、熱心な来場者からは多くの質問があったと、藤堂さんも手応えを感じていた。
企画を担当したMichi & Co.は、海外からの旅行者に向け、日本への特別な旅やさまざまな文化体験を紹介している会社であり、代表を務める川邊真代さんは、今回の展示作家二名の世代や作品作りの背景が異なることに着目し、「世代や背景を超えた新たな美意識を伝えたいと思い、POST-WABIと名づけた」と語る。このタイトルは藤堂さんとの会話から生まれたと言う。今回の展示では、現地のコレクターや陶芸に関わる専門家や学生の来場が多く、賑わいを見せていた。シンガポールでは、和食や日本酒の人気の高まりとともに、陶芸作品に対しても興味を持つ人が増えており、こうした日本文化に関する展覧会は、徐々に広がりを見せていくことだろう。
■関連情報
ジャパン・クリエイティブ・センター(シンガポール) イベントページ
https://www.sg.emb-japan.go.jp/JCC/invite_postwabi_2023.html