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『今泉毅 陶展 ―白と青と黒―』展覧会レポート

茶碗と花入。左奥から白瓷、窯変天目、氷裂文

2021年7月15日(木)〜21日(水)、新宿 柿傳ギャラリーにて、陶芸家 今泉毅さんの個展が開催された。

同ギャラリーでは10年前より定期的に今泉さんの個展を行なっており、今回は2年ぶり6回目の開催となる。今展では、新作の茶碗や花入などを中心に、日常に取り入れやすい食器も含めた80点以上の作品を展覧。今泉さんの作陶活動の充実ぶりが窺える内容となっていた。

埼玉県を拠点に活動する今泉さんは、大学在学中より作陶を始め、岐阜県の多治見市陶磁器意匠研究所にて技術を習得。陶芸の面白さに没頭し、土と釉薬、そして炎が生み出す表現を熱心に追求している。主に取り組む作品は、貫入が美しい青瓷や白瓷、鉄釉の釉調が多彩な天目など。今泉さんの天目には「窯変天目」という名称が付けられている通り、「窯の中で変化する」ことから生まれる景色の無限の広がりが映し出されている。今回も、静謐な夜空を思わせるものから現代的でメタリックな輝きを放つもの、オーロラのような複雑な発色のものまで、様々な天目作品が展示されていた。

多彩な表情が美しい盃

これは青瓷も然りで、作品を手に取りゆっくりと鑑賞していると、深みのある青から明るい青、透明度の高い青、濁った青など、様々な青の世界が広がっていることがわかる。白瓷の作品については、「気軽に使っていただきたい」と今泉さん。上品でありながら普段使いしやすいぐい呑や皿、鉢などのほか、丸い形の可愛らしい花入は女性客にも好評のようだ。釉薬だけでなく形姿にも真摯に向き合い、「今回は丸い形を多く作ってみました」とのこと。茶碗にも丸みのある形が多く用いられており、釉際のバランスの良さや手取りの良さが印象的だった。

柿傳ギャラリーの静かで落ち着いた空間に、白と青と黒の作品が織りなす清涼感が駆け抜ける。都会の夏の暑さを忘れて、心地よいひと時を過ごすことができた。

文:堤 杏子

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。