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『中里太亀・健太 新作展 2021』展覧会レポート

2021年4月2日(金)~6日(火)、銀座万葉洞みゆき店にて、唐津の陶芸家 中里太亀さん、健太さん親子の新作展が開催されました。

太亀さんと健太さんは、太亀さんの父である中里隆さんとともに、親子三代で作陶活動に励んでいます。昔ながらの蹴ろくろを使用し、一つひとつ命を吹き込まれる器たち。そのどれもが、日常で使いやすい、料理の映える作品です。家族との食事の時間を大切にしている中里家ならではの使い手への思いやりが、器にも表れているのでしょう。今回の展示も、食器や酒器をはじめ、大小様々な花器など、見応えのある内容となっていました。

会場入口に展示された花入(中里太亀)

太亀さん、健太さんの作品には、唐津の風土と伝統を活かした多様な表現技法が用いられています。今回の太亀さんの新作の中でも興味深いのが、鮑の殻を載せて焼いたという「唐津南蛮掛花入」。焼成の際に鮑の殻から出るガスにより、殻を載せた部分が光沢のある黒色になったそうです。無釉焼締でありながら美しい艶を放つこの花入はひときわ印象深く、灰かぶりのくすんだ色味や鮑の貝跡も手伝って、情感豊かな景色を作っています。同じく唐津南蛮の土を使った「唐津南蛮ぐい呑」は、ざらざらした土の感触が癖になりそうな作品。同じ土でも、これほどの表情の違いが出ることに驚かされます。

健太さんの新作では、酒器、大鉢などが目を引きました。「三島鉢」の印花と勢いある刷毛目の模様が、味わい深い趣を湛えています。「自宅で過ごす時間が増えた今、家族との食事の時間を大切にするようになった方も多いと思います。食事というものを通して、家族が楽しい時間を過ごす。僕の器は、そんな居心地のよい空間を作るものでありたいと願います」と健太さん。訪れた来場者とも楽しそうにお話しされていました。

昨今の新型コロナウイルスの影響もあり、開催が延期となっていた親子展。この度無事開催することができ、関東圏のファンも待ち望んだ展覧会となりました。

文:堤杏子

■関連リンク

・中里太亀 プロフィール
https://www.kogeistandard.com/jp/artist/taki-nakazato/

・中里健太 プロフィール
https://www.kogeistandard.com/jp/artist/kenta-nakazato/

 

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。