MUFG「KOGEI ARTISTS LEAGUE」開催決定
工芸トピックス VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
日本には、陶磁器、漆器、織物、木竹品に金工品など、さまざまな土地に工芸の産地が存在し、その土地ならではのものづくりが行なわれている。日本のやきものでも、九州の「唐津焼」と東北の「大堀相馬焼」では、素材や色表現などは大きく異なり、同じ石川県の漆器であっても、塗りが特徴的な「輪島塗」と木地挽きを得意とする「山中塗」のように、それぞれ独自の魅力を持つものもある。そうした産地ならではのものづくりを知ることは、一つ一つの作品を違った角度から楽しむことにも繋がり、現在では海外でも日本の工芸産地に興味を持つ人が増えてきている。この連載では、日本の工芸産地を一つずつ取り上げ、それぞれの歴史や文化的背景を紹介していく。
六古窯に共通して言えることは、土に恵まれているということだ。いずれも、その土地ならではの良質な土が取れ、陶芸産地の基礎を築いた。備前焼では主に「田土(ひよせ)」と呼ばれる田んぼの底の土が使われるが、この土は芸術家として名高い北大路魯山人にも絶賛された。また、常滑焼と言えば、現在では赤茶色の朱泥の印象が強いが、この朱泥は常滑の歴史の中では新しいものである。ただし、この朱泥も常滑で取れた土を改良したものであり、今でもその土地の恩恵を受け続けている。
技法においては、六古窯の多くの地で、釉薬をかけずに焼く所謂「焼締」の技法が用いられている。この焼締は、「窯変」と呼ばれる窯の中での変化による土の表情の違いを楽しむことができ、今ではその一つ一つの固有の表情が自然美を感じさせるとして、海外でも人気が高まっている。六古窯は、それぞれに異なる個性があるが、古くから続く産地としての共通する趣があり、それらの歴史を学ぶことで、一層産地への愛着が湧いていくことだろう。
参照
別冊太陽『六古窯を訪ねる』(平凡社)