『谷穹 抽象と静寂』展覧会レポート
展覧会・イベントレポート VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
東京都
2024.11.27 – 12.9
日本橋髙島屋
2024.11.28 – 12.8
セイコーハウスホール
東京都
2024.11.30 – 2025.2.2
松濤美術館
岐阜県
2024.11.30 – 2025.3.16
岐阜県現代陶芸美術館
中国から伝わった喫茶の風習は、桃山時代に茶の湯文化として大きく花開いた。茶人や武士が日本独自の美意識を追い求める中、美濃でも多岐にわたる様式の茶碗が焼かれるようになる。
美濃焼の一つに数えられる椿手には、釉薬に含まれる鉄の量によって、黄色から、茶色、黒色、時に椿の花のような赤色まで、さまざまな色が現れる。加藤氏が幾日も薪を絶やさず、穴窯の火から生み出した椿手茶碗は、赤茶色に黒色が混じり合う複雑な色合いが奥深い。高台に見える素朴な土の質感と、際まで掛けられた艶やかな釉薬との対比には、洗練された趣も感じられる。しっかりとした半筒形に手に馴染む心地良さがあるのは、茶道に精通する作家ならではの造形だろう。揺るぎない風格の中に、精力的に創作に向かう作家の熱量があふれているような作品だ。