「伝統工芸とは何か」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.3

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
京都府
2025.3.22 – 7.27
ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM
東京都
2025.3.26 – 3.31
日本橋三越本店
東京都
2025.3.29 – 4.3
寺田美術
2025.3.30 – 6.1
日本民藝館
中世に焼かれた信楽焼、「古信楽」。それが持つ独特の佇まいに宿る当時の陶工たちの美学は、時が経った今も色褪せることなく確かにそこにある。この「やきものの意識」ともいうべきものを、現代の空間の中に表現するにはどうすべきか。信楽の陶芸家・谷穹は、日々その問いに向き合い続け、中世の陶工たちと同じ眼差しでやきものを作ろうと試みる。
本作《信楽 茶碗》は、丸い形と色彩の明暗対比が目を引く茶碗。穴窯で焼成し、匣鉢に入れて焼くことで、色の出方を制御している。器肌には信楽らしく長石が表出し、その質感を飾り立てることなく簡素に伝えている。薄造りで大きめの丸い形は収まりが良い。高台は糸切り後に指で押し、ニュアンスを出している。原始的であり現代的、粗野であり端正、相反する要素が同時に存在しているような、不思議な心地がする作品だ。この作品にしか醸し出せない雰囲気というものがあるのだと、そう思わせられる優品である。