開窯350周年「鍋島焼」の記念事業が始動
工芸トピックス VOL.36

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
京都府
2025.3.5 – 3.10
京都髙島屋
2025.3.6 – 6.7
資生堂アートハウス
東京都
2025.3.7 – 6.15
21_21 DESIGN SIGHT
滋賀県
2025.3.8 – 9.28
佐川美術館
人間は土の中では生きられない。それは酸素がなく、呼吸ができないからである。至極当然のことであるが、一方で生物の中には酸素のないところで生きるものもいる。その多くは細菌や微生物で、地中や海中に存在している。彼らのことを、嫌気性生物と呼ぶ。
谷本貴作《嫌気的》は、そうした嫌気性生物からインスピレーションを得て制作された。陶芸家にとって、制作に欠かせない素材である土。その土に正面から向き合い続けてきた作家が、「深呼吸」をテーマに制作したものだ。伊賀の土と長石を用い、何度も焼成を繰り返して作られたこの作品は、土のずっしりとした密度からしておよそ酸素とは無縁のような佇まいをしている。嫌気性生物を拡大するとこんな姿だろうか、と想像が膨らむ。
しかし焼成というのは酸素との化学反応でもある。嫌気性生物をモチーフにした土の塊が窯の中で酸素と結びつき、あるいは離れ、変容し、誕生する作品。《嫌気的》でありながら、対照的に酸素の存在を感じさせる、高度なコンテクストが興味深い。じっと眺めていると、ふと深呼吸をしたくなる。そんな作品である。