インタビュー:陶芸家・加藤亮太郎
VOICE VOL.7
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中里隆作《唐津刷毛目茶碗》は、唐津の鉄分を含んだ土から熟練のろくろの技で力強い形を引き出し、藁で作った刷毛で白化粧を施したのち、透明釉をかけて作られている。すんなりと開いた形状の上に伸びやかに線を描く乳白色の刷毛目が、濃い褐色の土肌と相まって醸し出すおおらかな雰囲気は、「何気なくすーっと作っています」と作家が言う通り、余分な力みの無い自然体の魅力を携えている。
唐津の歴史ある窯元の出身で、伝統的な古唐津のみならず、新しい技法への挑戦と研究を重ねてきた中里だが、刷毛目は作陶を始めた当初から作り続けている作品の一つ。唐津だけにとどまらず国内外を旅し、それぞれの土地で培った制作経験による自由な作風が、円熟味あふれる作品に軽やかさを与えている。作家が引き出した唐津の自然の手触りを、手元で深く味わいたい一作だ。