『谷穹 抽象と静寂』展覧会レポート
展覧会・イベントレポート VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
富山県
2024.12.7 – 2025.6.1
富山市ガラス美術館
2024.12.11 – 2025.3.2
清水三年坂美術館
2024.12.17 – 2025.3.2
京都国立近代美術館
東京都
2024.12.25 – 2025.1.6
日本橋三越本店
凛とした緊張感の漂う《氷裂文花器》は、天目や青瓷を中心に制作する作家、今泉毅の手による作品。厚く掛けられた釉が黒く滑らかな胎土を透かして、品のある艶やかな薄墨色を呈している。幾層にも重なる繊細な貫入には無限の奥行きが感じられ、その佇まいに吸い込まれそうになる。「氷裂文」という名の通り、そこに広がるのは、氷のひび割れる一瞬を閉じ込めたような、無彩色の静謐な世界だ。
青瓷というやきものに対する美意識は、長い歴史の中で確実に多様性を獲得してきた。至高の青が追求される一方で、さまざまな色彩が生み出される。貫入は一つの装飾表現として確立され、細かな貫入から大胆な貫入まで、最も作家の個性が表出する領域と言っても過言ではない。
本作は、それらの多様な表現の可能性を示唆するものの一つだろう。これからの今泉氏の作品の進化に、期待は膨らむばかりである。