『谷穹 抽象と静寂』展覧会レポート
展覧会・イベントレポート VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
東京都
2024.12.12 – 12.25
セイコーハウスホール
石川県
2024.12.17 – 2025.2.24
国立工芸館
東京都
2024.12.18 – 12.24
日本橋三越本店
京都府
2024.12.21 – 12.29
essence kyoto
「緋写り」は錦鯉の一種で、漆黒の地に燃えるような朱の斑紋を持つ。その色彩に共鳴し名付けたという本作「緋映(ひうつり)」は、木地師 田中瑛子の確かな木地挽きの技術と、黒・朱・金を自在に操る色彩感覚が融合した作品。滑らかに挽かれた流線形と、魚の尾のようにも見える高台は、池の中を優雅に泳ぐ鯉を連想させる。杢目に沿った朧げな金色の筋は、水面に映る波紋のように、緩やかにたなびいている。
田中氏は、木地挽きの修行を積む中で栃という素材に出会い、その個性の豊かさに魅了されたという。栃ならではの繊細な杢目の魅力を最大限に引き出すため、一つひとつ自らの手で形を削り出し、それが最も美しく見える状態まで丁寧に漆を塗り重ね、研ぎ、磨いていく。一切の妥協を排した作品は芸術的に完成度が高く、酒器としてだけでなくオブジェとしても見栄えのするものだ。作家のこだわりが詰まった作品を、手元でゆっくりと味わってみたい。