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銀彩花入

陶芸
工芸作家
岩佐 昌昭
産地
島根県・出雲
発表年
2024年
サイズ
Φ52 × H260 mm
素材
陶土、漆

静けさのかたち

備前と信楽という、二つの異なるやきものを学び、出雲にて開窯した陶芸家、岩佐昌昭。独立後、葛藤しながら自分の作風を模索する中で生まれたのが、陶胎漆器の作品だ。やきものの範疇にこだわらず、興味を持った素材を取り入れる好奇心が独自の世界を切り拓いた。

作品のすっとした立ち姿に引き寄せられ間近に見ると、三角に形作られた非常に薄い口造りが鋭く迫ってくる。金属と見紛う表面の質感は、陶磁器に漆を塗ったあと銀箔を貼って再度焼きつけたもので、銀箔が一部剥がれ落ちるような、繊細なだけではない、焼成の力強い臨場感も感じられる。

鈍く光る銀彩の風合い、周囲に静謐な空間を作り出す佇まいは、作家が暮らす山陰地方の奥ゆかしい風土を映し出しているようだ。銀ならではの経年変化を慈しみながら、手元に置きたい作品である。

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