インタビュー:陶芸家・加藤亮太郎
VOICE VOL.7
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歴史ある窯元で萩焼の伝統に向き合いながら、自身の制作に誠実に取り組む作家、坂倉正紘。氏の作品には幼い頃から触れてきた萩の土へのこだわりと、彫刻を学んだことで研ぎ澄まされた造形力がいかんなく発揮され、萩焼の新たな未来を感じさせてくれる。
山中にて、雨水や湧水が岩肌、木肌を静かに伝い落ちていく。本作はその風情に惹かれて作家が制作している作品群の一つ。眺めていると、ひっそりと立つ一本の木が太陽を浴び、風雨にさらされたのち、朽ちて土へと還っていく情景が目に浮かぶようだ。紐作りの手法で形作られた土肌に沿うように白釉が流し掛けられた花器は、まるで自然物そのもののような、余計な作為の無い美しさを湛えている。作家が身の回りの自然に注ぐまなざしと、目にし吸収したものを自身の手から生み出す創造性に、深く感じ入る作品である。