『谷穹 抽象と静寂』展覧会レポート
展覧会・イベントレポート VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
富山県
2024.12.7 – 2025.6.1
富山市ガラス美術館
2024.12.11 – 2025.3.2
清水三年坂美術館
2024.12.17 – 2025.3.2
京都国立近代美術館
東京都
2024.12.25 – 2025.1.6
日本橋三越本店
京都の竹材の歴史は古く、平安時代の頃、中国よりもたらされた竹がこの地で育てられたのが始まりだと言われている。京都御所の南、骨董や古美術商が立ち並ぶ界隈にほど近い達磨町の一角に、竹又・中川竹材店は創業した。1688年より現在に至るまで、11代に渡り店を構えている。夏と冬の寒暖の差が激しい京都で採れる竹は質が良く、古くから日本建築に欠かせない建築材料だった。戦後の新建材の登場に伴い需要は減少するが、竹又は、京都の建築や茶道具などの工芸品に使用される竹材「京銘竹」の一次加工から、寺院や日本庭園の竹垣の施工まで、全工程を自社内で行い、竹の加工の幅広い技術を培ってきた。
竹又の技術の基礎となるのは、長年築いてきた竹材店としての経験だ。様々な種類の竹を取り扱ってきたことから、完成品に適した素材を選ぶことができ、丁寧な加工を施して仕上げていく。中でも、京都の街なみには欠かすことのできない竹製の柵「駒寄せ」や竹垣は、竹又の代表作品であり、確かな実績を誇る。
現在は、伝統的な竹垣や建築材料以外にも、デザイナーやアーティストの作品制作にも柔軟に対応しており、その製品はミラノやパリの見本市に出品されている。京都在住のデザイナーと2015年に製作した組み立て式の小さな和室『Cha no ma』も海を渡り、天然の竹の節目が作り出す、格子状の造形美で注目を集めた。素材の美しさを最大限に引き出す竹又の技が、随所に散りばめられている。