『谷穹 抽象と静寂』展覧会レポート
展覧会・イベントレポート VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
東京都
2024.12.12 – 12.25
セイコーハウスホール
石川県
2024.12.17 – 2025.2.24
国立工芸館
東京都
2024.12.18 – 12.24
日本橋三越本店
京都府
2024.12.21 – 12.29
essence kyoto
中川木工芸は、代々桶作りを行ってきた木桶工房である。初代の亀一が京都に工房を開き、現在は二代目である清司さんが京都工房を、三代目の周士さんが滋賀県にある比良工房を手がけている。二代目清司さんは2001年に重要無形文化財の保持者として認定を受け、その息子である周士さんは清司さんに師事し、2003年に独立。かつて木桶は日本各地で作られており、京都近郊にも250近くの木桶工房が存在したが、今では4つの工房のみとなり、数少ない桶工房の一つとなっている。
京都の木工芸は、自由度が高く、格式ある旅館や料亭からの様々な要望に応え続けてきた歴史があり、中川木工芸はその技術を脈々と受け継いできた。比良工房では、檜や椹、高野槙、杉などの材木を用いた桶作りを中心に、大きな家具から酒器やトレイまでさまざまな木工品に対応する。また、周士さんは、伝統的な技法を活かしながらも、新たな木工にも取り組んでいる。2012年には、京都の伝統工芸ユニット「GO ON」の立ち上げに参加。茶筒や金網職人など垣根を超えた工芸職人と意見を活発に交わし、作品を作り上げた。この活動は、国内外の展示会やメディアでも注目され、京都の工芸を多様な姿で発信し続けている。
尾州檜や高野槇を用いたシャンパンクーラーは、周士さんの代表作品の一つだ。木を竹串で繋いだのち、箍(たが)で固定する。曲線が特徴的な口縁部分は、これまでの桶作りの常識を超えた新たな意匠となり、2010年には「ドン・ペリニヨン」オフィシャルシャンパンクーラーに選出された。現在は海外を意識した活動にも力を入れる。2011年にはイタリア・ミラノ、2013年にはフランス・パリやイギリス・ロンドンで作品を展示し、近年では米国での展示も開催した。「100年先まで桶を残していきたい」と語る周士さん。桶の可能性を信じ、今日も木に向き合い続けている。